
|
「2月10日は大雪になりそう」という天気予報で、電車が止まる恐れがあるので、打ち合わせを今日にしてもらっての「都内出張」。 今日は風は冷たいが、快晴で、動くには楽な日だ。 新型コロナ(オミクロン株)が猛威を振るい、電車は1車両に10人程度。もっとも市川を過ぎる頃から乗客は増えて、秋葉原ではほぼ満員で、通常の午前11時頃の混み具合。 山の手線に乗り換えて王子駅へ。
北口を降りてガード下を抜けて、石神井川(しゃくじいがわ)自然観察コースの一部、音無親水公園を歩く。
ここは何度か来たところなので、途中までは早足で歩く。
昨秋、真っ赤に染まった枝を川面に伸ばしていたモミジは、細い裸の枝が寒風に揺れている。
川床にはいつものように水車が座っている。
音無橋の下あたりで川床の、飛び石状に配置された岩を渡り、石段を上って右岸から音無橋の上に出る。
ネットからダウンロードした地図を取り出し、実際の橋と、地図上の橋を同じ位置、方向に置き、目的地を確認する。
左の大通りを都電が走り、その向こうには飛鳥山が見えている。
実は、今回の散歩の目的は、前にも書いた「仕事先に向かっていて、道路から斜め下を見おろすと、子供達が裸で遊んでいた、滝の有る流れ」を探すこと。
最近、ネットで調べていて、あの時向かっていた施設は「醸造試験所」ではなかったか、と思えて来たので、その跡地に行くことにしたのだ。
橋から細い路を右に歩くとすぐに南に、なぜか赤レンガの立派な門がある。 その右には大きなマンション風な建物がある。
門標が無いので(このマンションの中庭への入り口じゃないだろうな……)と、私有地に入る不安を覚えながら門を入ると小さな公園が広がっていて、幼児を遊ばせる母親のすがたや、ゆっくりと散歩する老夫婦のもいる。向こうから自転車でやってくる人も。
この時点では、まだ自分がどこにいるか分からない。
公園の歩道を進み南端を右に折れると、また公園。
さっきの公園の続きらしいが、こちらはもっと広い芝生の、しかし、公園としてはこじんまりとした、あまり手を加えていない自然な公園だ。手前には大きな桜の木が数本。
公園を斜めに走る散歩道を歩き終わって、やっと気が付いた。
目の前に赤レンガの大きな建物がある。赤煉瓦酒造工場(旧醸造試験所第一工場)だ。
中は一般公開されているはずだが、予約もしていないので、今日は入れない。
外を何度も回って、その姿をカメラに収める。
世界で初めて清酒酵母を分離し、醸造技術、関税制度の確立に功績を残した矢部規矩治博士の像や、
しばらく工場の周りを歩いて、ふと地図を取り出すと、「日本醸造協会」が工場敷地の向こうにあるらしい。
ビルに近づいてみると、入り口に協会の看板が揚げてある。
初めに書いたように、今日は探すものを求めて来たが、この日本醸造協会がその目的地だった。 と、いうのも、25年ほど前に「醸造」か、「酵母」か、「ワイン」か、そのような酒などに関連する組織か会社を訪問するために、駅から歩いている時 「仕事先に向かっていて、道路から右斜め下を見おろすと、子供達が裸で遊んでいた、滝の有る流れ」 を見たから、その目的地と駅からのルートを知りたくて、この1年ほどは時どき北区の公園を含めて歩いている。 ここの旧工場の記憶は無いし、この協会の、新しいコンクリートのビルと平屋造りの古い建物の、はっきりとした記憶も残っていない。 あとは、ここから飛鳥山を通って王寺駅に行く道を辿っているうちに、あの景色に近い場所があるかどうかだ。 旧工場の隣の小さな公園(酒造工場跡地)を戻り飛鳥山を目指す。
公園の歩道を歩きながら芝生の先のトイレの建物を見ると、レンガ色に薄緑の屋根。
と、いうことは、入り口の風雪を経た赤煉瓦の門柱は、昔の赤煉瓦酒造工場の敷地への入り口の門そのものということになる。
やっと、この辺りの様子が見えて来た。目の前にあるマンションなどの建物が当時からあったものか、工場跡地の一部を売却して再開発に回したのかはわからない。
広い公園を通り抜けて、最初の小さな公園との間から住宅地の細い路地に出る。
すぐ醸造協会の建物の裏門があり、通り過ぎると広い通りに出るとそこは明治通り。
横断歩道を渡り住宅街の中を飛鳥山を探して進むが、区画違いに気が付いて明治通りと本郷通りのT字交差点そばの交番の横から飛鳥山公園にのぼる。
今日の人影はひとり、ふたり。 取りあえずもう一段山の上に登り、少し歩き、キッズ広場の子供たちの歓声を聞いてから、もとの広場の西の端に降りる。
モニュメントの近くの大石に席を占め、今日のランチにする。
特大のおにぎりを食べながら考えた。
都電荒川線の王寺駅の南口を出て、飛鳥山公園にのぼり、今休んでいる場所を通って、大きく左カーブの道を辿って行くと、確かに醸造協会に着く。
しかし、昔歩いた道は、左側は畑が広がり、右は都内とは別世界の景色で、茶色の岩肌の谷川が低いところを流れ、川上に小さな滝があった。 25年前とは言っても、もう明治通りや本郷通りはあったはずだから、今回の「探し物散歩」は成果なし、ということになる。 と、いうことで、「記憶を辿る散歩」は、また「宿題」のままで終わったが、サスペンスドラマの探偵になったつもりで探索すると、ボケないし、楽しみも続く。 まだ1時間足らずしか歩いていないから、「健康散歩」はこれからだ。 さっきの音無橋に戻り、石神井自然観察コースを更に先に進むことにする。
岸の塀のせいで、しばらく川が見降ろせない右岸を歩き、松橋で左岸に渡り、右下5メートルあたりを流れる音無川を眺めながら、遊歩道を川上に向かう。
7、8羽の水鳥が水面に浮かんだり、川床の乾いた所で羽を休めている。
この辺りの鳥を紹介する川岸の説明パネルによると、キンクロハジロの雌雄の群れのようだ。
この自然観察コースには、この音無川沿いで見られる鳥や、魚を紹介するパネルがいくつも立ててある。
そういえば、それらの生物・植物の観察のために、双眼鏡を持参すると良い、とも書いてあったか。
また、野鳥の彫刻なども、所々に設置されている。
ここは滝野川二丁目60の辺り。
紅葉橋を過ぎた所で、古そうなお寺に出会う。
「金剛寺」。 モミジで知られ、寺門の横に通称の「紅葉寺」の石柱が立っている。
区の説明パネルによると、本尊の不動明王像は弘法大師作といわれているそうで、源頼朝が挙兵して鎌倉に向かう途中、この地に立ち寄った(布陣した)とのこと。
また、境内には松橋弁財天が祀られているお堂がリニューアルされて建っている。
遊歩道を紅葉寺の先に進むとすぐに、川岸を半円状に削って、澱みを作ってある。周囲は歩道が囲み、低い柵も立ててある。
水辺の自然観察のために作ったものと思われる。
木製の歩道の上で年配の人が3人、釣りをしている。
仕掛けはとても小さく、竿が50cm足らず、道糸も1mあるかどうか。
小さなウキを3つほどつけたしもり仕掛けで、水面に腕を伸ばして釣っている。
「何が釣れますか?」
と聞いて、見せてもらったのが、これ。
アブラハヤとのこと。大きくなっても12cm程度だとか。
まあ、このメダカより少し大きいぐらいの魚を釣るには、仕掛けも小さくなるだろう、と納得。
水辺ではカワセミ、ここを削ってできたすり鉢状の斜面では、スズメはもちろん、ハクセキレイなどの小鳥も見かけることができた。 出発から2時間。朝からの歩数も8000歩を超えたので、駅に向かう。
今度は健康のための「駅に急ぐ時の早足」で。
途中で、「緑の吊橋」の矢印があったが、急いでいるので見に行けない。
とりあえず上の遊歩道からカメラを向ける。
帰宅後、ネットで調べると、石神井川の旧流を利用して作られた公園「音無さくら緑地」に架かる吊り橋とのこと。
写真の木立の間、中央部に写っている。
事前に調べないで散歩していると、こういう事がよくある。
後で(あー、ちゃんと目で見てくれば良かったのに……)ということが。
まあ、外国ではないし、散歩の目的地も少なくなってきたので、同じ地を歩きに行くことも多くなるだろうから、「次回のお楽しみ」ということになる。
現に、飛鳥山公園には、近くに来ると立ち寄るので、もう3,4回は行っている。
また、桜の頃に来ると、楽しめる地だと思いながら、駅へ急いでいると、ちょうど、飛鳥山公園の無人ケーブルカー「アスカルゴ」が降りてきたので、音無川の向こう岸から1枚。
都電を桜などの花でラッピングした電車が来たので、これも1枚。
![]() 急いでいたので、説明板も標示も探さないで、通り過ぎてしまった。
この遊歩道では、川面に向かっては桜並木が枝を伸ばし、歩道脇には、いろいろな説明パネルや野鳥の彫刻、セラミックアートが次々と現れ、なかなか楽しい。
|