昼過ぎに打ち合わせを終わり、午後はフリーになった。とは言っても、曇り空の下、洗濯物はベランダに干したままで、いつ雨になるか分からないので、あまり帰宅の時間が遅くならないようにしたい。(カミさんはフルタイムの仕事なので、6時でなければ帰宅しない) 先日時間が遅くて閉館していた刀剣博物館に行くことにした。 両国で降りて、国技館を横目に、旧安田庭園に入る。このところ両国で降りることが多く、この界隈は私の庭の様になってきている。ランチの場所に困ったら駅から3分の旧安田庭園が最適だ。両国は、都内で仕事の場合は必ず通る駅だし、帰りも総武線で1時間程度だから。 今日も旧安田庭園でランチにする。刀剣博物館内には休憩スペースが期待できないからだ。
ここは人通りが少ない。 いつもは週に1回程度の散歩のランチだからおにぎり1個半か2個ですますけれど、今日はレアなケース。(おにぎりは食べたらなくなるけれど、「おかず入れ」を通勤バッグに入れるとぱんぱんで帰宅するまでじゃまだから) 三色おにぎりは、三種の具を中心一ヵ所に詰めるのではなく、3方に散らしておくとそれぞれの味が楽しめることがわかった。もしくは、前に書いたように太巻きにするか。。。
途中、頭上で怪鳥のような鳴き声がして、心の字池の島の木の梢に降りて来た。名前は分からない。カモメでも、カモでもない。 ![]() もっと大きくて、首も長く、サギの仲間のようだ。白鷺ならよく知っているけれど、灰色の翼だ。野生の鳥が飛来する静かな公園というか、エサになる水生動物が豊富な池があるからと言うべきか。(後ネットで調べたところアオサギだったらしい)
入場料は大人千円。入り口でコロナ対策の検温と手の消毒を済ませて3階の展示フロアへ上がる
現在は「2020年度現代刀職展 −今に伝わるいにしえの技−」の展示中。 私も興味はあるけれど、流石に何度も通えない。そもそもおにぎりランチの主目的は運動することだから。(もっとも、今日はそれほど歩きそうにないが)
私が小学生の頃には、各村に鍛冶屋さんがあり、炉の火を強くするための鞴(ふいご)に空気を送る踏鞴(たたら)を足で踏んで鉄を真っ赤に熱し、鎌や鍬を作っているのを、学校の帰りに一心に眺めたのを覚えている。 昔を知らない孫たちのために少し書いて置くと。 「踏鞴(たたら)を踏む=勢いあまって止まれないで何歩か歩いてしまうこと」はこの踏鞴(たたら)踏みが由来。 現代の会話で同意を表す「相槌(あいづち)=向こう鎚(槌)」も、刀匠の小槌の指示に従って、弟子が大きな鎚で打つことから来たそうだ。(私は、以前は小槌が相槌だと誤解していた) 私の村の小さな鍛冶屋では親方が一人で頑張っていたけれど、刀剣などの制作には、弟子の相鎚が必要だったのだろう。 ウチでも、包丁を研ぐために荒砥(あらと)、中砥(なかと)、仕上砥(しあげと)の3種類の砥石をもっともらしく持っているけれど、いつもは中砥だけで済ましている。 (もっともあれで二つ胴にされてはたまらないけれど……) 3階のフロアには多数の刀剣、鍔、拵え(柄、鞘など)が多数展示されている。
室内に入ると、現代の名工たちが研ぎあげた古刀、新刀などが整然と展示されている。 右回りの最初には、備前長船(私の故郷岡山の名刀)がある。 「備前国住長船七郎衛門尉祐定作」とあり、研ぎあげたのは杉原宗都さんという現代の研師だ。
写真もたくさん撮ったけれど、著作権やその他の権利があるかも知れないので、この1点だけお借りしておく。
鍔(つば)の部門には女性作家の斬新な作品もある。 拵えの部門で一つ勉強になったのは、鞘(さや)の鍔近くに戦いのためではないものがあること。 片面の外側には「小柄(こづか)」があり、これは戦いの場で使う小刀だけど、もう一方の外側には「笄(こうがい)」が備えられ、これは日頃の身だしなみにつかう。 「刀」は刃長が60センチ以上のもので、刃を上にして差すもので、室町以降の作だそうだ。 「太刀」も柄を切り詰めて短くすると「刀」になるとか。だから、古刀の名作も柄を切り詰めて銘の部分がなくなると、誰の作か分からなくなる。そういう隠れた銘作も多くあるのではないかと言われているそうだ。 私の勝手な見方だけど「太刀」はどちらかというと権威を示す飾りの様な大人しいイメージで、「刀」は戦いの武器のような感じがする。刃を上にして腰に指していると「寄らば切るぞ」という感じ、刃を下にしていると、少し戦いのイメージが弱い。 まあ、「馬上の戦い」向けとか、「地上の戦い」が中心になったとか、時代の変化でそうなったのだろう。
私は、フライパンと包丁が使えれば、何でも作れると思っている。「切る、刻む」の時間が掛からなければ料理は苦痛にならない。 話を戻して……、ここに書いた刀剣に関する説明は博物館のパンフレットから得た情報だけど、面白い話がたくさん書いてある。 その中からひとつ借りておくと: 考えて見れば、鎚の打ち方であのようななめらかな、あるいは、(心臓)のパルスメーター画像のように細かな模様は入れることはできない。 30分の予定が1時間に伸びたけれど、未知の情報が一杯で、十分楽しむことができた。 博物館の外に出ると、目の前が「旧安田庭園」の西側の入り口だった。閉門時間は18時になっている。国技館側からの入り口は16時半だったはずだけど。 新郎と花嫁に家族とカメラマンが付き添って、庭園内を歩きながら、絵になりそうな位置を探して撮影していた。
人(私)も、鳥も、生きるのは大変だな。 |