このHPは、私の「散歩記」を読んだ方が、ご自身も思い立って健康散歩を始められると良いと思って書いていますが、今回は「番外編」として、参考までに私の大腸ポリープの経験を書いておきます。
近くの病院で大腸ポリープの切除手術を何度も受けています。
何も知らなければ「カメラの先の輪っぱでチョキンチョキンと切って日帰り手術」と、気軽に済まされたのに、事前の説明(最近はインフォームド・コンセントと言うのかな)で「腸に穴が開くこともあるんですよ」とか「5ミリでも悪性の(大腸ガンになる)ものもあるんですよ」と院長先生が脅すものだから、少々弱気になってしまいます。
でも、実際にはそれほど構える必要が無かったことをお知らせするために、これを書いています。
前日から当日の朝にかけては、下剤攻めで大腸を空にしますので、手術前日の日記から始めます。
朝食:昨夜の残りのタケノコご飯と塩しゃけ。
消化が良くないのは分かっているが、旬のものは美味しい。
昼食:消化を考えて、温かいソーメンに卵を1個落として1人前。(90g)
日常の体のリズムの経験で、「明日の朝」には今日の
昼ごはんが排出されるのを知っているから。
(ということは、朝食のタケノコご飯も明朝には排出されるはず。)
15:00 赤い小粒の下剤「○○〇」4錠を飲む。
事前検査で知って、この後は時間的にも気持ちにも余裕がないはずなので、風呂掃除、洗濯物の乾燥準備をしてから、先日の掃除のとき見つけた、昔、子供用に買ってやったノルウエーの学者、ハイエルダールの「コンチキ号漂流記」を読む。この本は今まで読んだことがなかった。子供用に買ったけれど、面白い。
18:00 経口腸管洗浄剤 ○○配合内用剤を2リットルの
ぬるま湯に溶き、1時間で1リットル飲む。あと1リットルは
明日の朝6時から飲む。この洗浄剤は何度飲んでも旨くは
ない。製造は国内トップクラスの調味料メーカーなのに!
もっと「うーん、コレはいける!」というのは作れないのかな?
(メーカーさんゴメンなさい)
19:00〜21:00 トイレに5回
22:30 起きていても面白くないから、自作の「グリーンティー・ハイ」
を2杯飲んで就寝。(ホントはアルコールは禁止)
2日目(手術日)
5:30 起床 早速腸管洗浄剤をグラスで2杯。朝刊を読み、
チェーン・スモーキングしながら、1時間で1リットルを飲む。
トイレには4回。固形物はなく薄い紅茶色の澄んだ水だけ。
これなら準備は完璧。
8:00 自転車で病院へ。
(この時は、1ヶ月ほど前に検査してポリープがあることが分かり、切除手術の当日を迎えています)
今日手術を受ける人は3人。
私の前が60代の男性で、付き添いの奥さんの話では3年前に他の病院でポリープが見つかったけれど「良性」だと言われたのと、切るのが痛いと聞いて放っておいたのが成長し、とうとう切ることになったとか。
「ここの先生は上手で、手術は痛くないと聞いて、やっと決心したんですよ」
という奥さんの話に、こちらも少しほっとする。
もう一人は私の後で、まだ30代と思われる女性。こちらは勤務先の健康診断で精密検査に回されポリープが見つかったとか。
とにかく3人とも「スネに傷持つ身」ではなく「大腸にポリープを持つ身」の仲間意識で、本人も付き添いもおしゃべりを続ける。 うちのカミサンには来なくて良いと言ってあったけれど、いつの間にか後に立って話に加わっていた。
10分ぐらいと思っていたのに私の前の人は30分以上かかっている。
やっと終了してその男性が出て来る。でも介添えが必要なわけでもなく、奥さんに付添われて自分の個室へ向かいました。
そういえば6人部屋は差額ベッド代無料ですが、2人部屋は6,000円、個室は10,000円かかる。私はもちろん6人部屋。
カミサンは「2人部屋ぐらいにしたら?」とは言ったのですが、6人の中にいびきの大きい人がいる確率も、2人部屋でもう一人の人のいびきが大きい確率もそんなに変わらないだろうと思ったのと、そもそもこの私自身いびきが大きくてカミサンにしかられている口なので、「お互いさまだ」と大部屋にしたのです。
9:00 胃の蠕動を抑える薬を注射して、待つこと10分。
私の番になり、手術台に上がります。
目の前にはモニターがあり、腸内の様子が見られる。
空の大腸に内視鏡が入ってくるのがよく分る。
ピンク色のデコボコの管の中をズンズン進んで、まるで宇宙船か
モグラ船で未知の世界を飛行しているようにも見える。
(俺のチョーも顔と違ってなかなかきれいだ。これなら
モテるかも……)と思う。
手術の担当は院長先生ではなく若い医師だ。
「いくつかありますから、まずS字(結腸)のものから取りましょう」
「イテテ。熱い!」
「あっ、痛いですか? それはいけません。神経が通っていますね。ちょっと待ってください。今度はどうですか?」
「あの、返事をする時間がある程度にゆっくりすすめてもらえますか」
(尻からカメラを入れられているのに話をするというのはどんな手術だ?)
と思いながらも、一言いっておく。
「そうですね。で、状態はどうですか?」
「ダイジョーブのようです」
「じゃ、君、はい、引きながら押して……」
アシスタントの看護婦さんに機材コードの操作の話している。
(おいおい、看護婦さんのトレーニングに人の腸を使わないでくれ)
と思いながらも、カメラを突っ込まれている立場の弱さで、黙っている。
(ヘアーサロンなどで、練習台になってくれる人は無料、などという話は聞くけれど、練習だから「ザンギリ頭」になっても文句は言えない。じゃ、私のポリープの切り痕がぎざぎざでも文句は言えないのか?そんな事はない。第一練習台になることに同意していないし、料金も取られる筈だ)
と考えていると、ぐらぐらっと大きな揺れが来た。
「キャー」(看護婦さんの悲鳴)
「騒がないで!」(婦長さんらしい年配の看護婦さんの声)
「すみません」(悲鳴をあげた看護婦さん)
しかし、素晴らしいタイミングで地震が来たものです。
まあ、私にとっては最悪のタイミングで、
(内視鏡を突っ込んだままで、オレを置いて逃げないで!)と心の中で叫びます。
幸いすぐに揺れは収まり、止まった手が手術を再開。
「ああ、良かった。取れました。あっ、切り取ったポリープを落としてしまいました。探します」
腸の中で何かが動き回っています。
「見つからないから後回しにして、盲腸の近くのを取りましょう」
大腸の中をあちこちにぶつかりながらカメラが進んでゆく。
でも、胃の真下辺りから前に進まない。
「君、おなかを押さえて」
指令に看護婦さんが胃の下辺りを押さえる。思いっきり強く。どうやら曲がった大腸をまっすぐにして、カメラを通そうということのようです。
息が止まるほど押さえられるわ、カメラが曲がり角に当たって痛いわで、こちらの気分は殆どエビ反り状態。
やっと盲腸の近くでカメラがもそもそと動くのが感じられ、まさに「通った!」と感激。
(なんちゅう手術や!)心の中で叫びます。
「遠いので結構難しいんですよ」
と言いながらカメラを前後左右に動かし、
「ああ、ありました。痛くないですか? あっ、取れました」
そう言いながらもう切除を済ませている。
麻酔無しの手術なのに切除そのものは殆ど痛みは無い。それよりその前に内視鏡が大腸の内壁を擦るほうがずっと痛い。
それから暫く、先に切り落としたポリープを探すのに、またカメラが何度も前進後退を繰り返し、挙句のはてには
「見つからないから諦めましょう!」
「でも、見つけて検査に回さないと悪性か良性か分らないでしょう」
「いや、きっと見つかりますよ」
という楽天的な会話が交わされ、カメラを抜き去ったと同時に
「先生、出てきました。2つ目のが出てきました!」という看護婦さんの声に拍手が起きたぐらいで、(掃除機のように吸い込んで外に受けた金盥(ボウル)に放出される仕組みになっているようだ)、本当に再び(なんちゅう手術や!)でした。
10日後に検査の結果が出て「悪性のが2つありましたが、きちんと取れていますのでだいじょうぶです」とのこと。まあ、受けた本人が一番笑った手術ですから、問題はないでしょう。
たまたま今朝(2024年10月30日)のNHK「あさイチ」でも大腸内視鏡検査の話をしていましたが、大腸の潜血検査を受けて「要精密検査」の連絡を受けても、内視鏡は大変そうだと精密検査を飛ばす方があるようなので、早期発見のためにも、気になっている方の背中を押し、気楽に内視鏡によるポリープ切除手術を受けられるよう、昔の日記に手を入れて掲載しました。
私は、2000年ごろから今までに(1.5年から2年間隔で)15、6回検査を受けて、ほぼその度に2〜4個の悪性のポリープが見つかり切除しています。
病院により対応はさまざまだと思いますが、希望すれば麻酔をして手術を受けられますし、昔は検査して後日手術、だったのが現在は検査時にポリープが見つかれば即切除してもらえるようになりました。また、最近の経験では、腸管洗浄も手術当日の早朝からでも大丈夫になりました。
もちろん、切ったポリープの紛失・捜索は数100回に1度ぐらいでしょうし、手術中に地震が起きるのは数万回に1度でしょうから、気にする必要はありません。
まあ、酒は飲むわ、煙草を吸うわの私がひと様に偉そうなことは言えませんが、皆様のご健闘とご健勝をお祈りします。
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